2015年10月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

ウェブページ

無料ブログはココログ

« 昨日の帰宅時ほか | トップページ | 組織的にストーカーをされている確実な証拠 »

2015年7月26日 (日)

中江兆民「三酔人経綸問答」

 

 

105_0293_2

 この本は出版当時(1887年)の世界情勢や日本の国防、経済、教育の進めるべき方向を
主に二人(洋学紳士君、豪傑君)が論じ、それを南海先生が評価、総括するといった内容
で、当時の日本や世界の情勢を垣間見ることのできる興味深い本です。

 

 読む前に当時は植民地時代で、フィリピンはスペイン領、台湾は中国(清)領、朝鮮は
中国の属国状態、ベトナムはフランス領、中国(清)もすでに香港、マカオを奪われ
植民地化が進行中、日本は欧米との不平等条約改正前であったことを頭にいれておくと
理解しやすいです。本文は短いです。現代語訳、原文両方あり、現代語訳ならば中学生
でも十分読み通せるかと思います。

 

世界、アジアの情勢は次のように度々触れられています。
プロシアとフランスの軍隊が、ひとたびヨーロッパの平原で交戦するならば、
ロシア軍はすぐさま砂を蹴たてて東方にあふれでるでしょう。もしこうなれば、
プロシア・フランス戦争の禍いはヨーロッパ大陸に限定されず、アジアの島
々もまた戦火のとばっちりを受けずにはすみませんし、イギリス艦隊に奪わ
れ根拠地にされるのは、たんに巨文島だけではすまなくなるに違いありま
せん。要するに、プロシアとフランスとはヨーロッパでせりあい、ロシアとイギ
リスとはアジアに進出して優位を争う、これが今日の世界の大勢です。

巨文島事件

 

 洋学紳士君、豪傑君の主張を簡単に言えば、前者は理想家の民権派、いわゆる左翼
と評される思想、後者は保守とか右翼と呼ばれるタイプの思想を展開します。

 

 著者の中江兆民は基本的に前者の側の代表的な思想家として紹介されることが多い
ようですが、5月25日で紹介した「国士 内田良平」では黒龍会の賛助会員として名を連ね
ていることが記されており、右寄りの思想も無かったわけではないようです。
「国士 内田良平」

 

 国防に関する洋学紳士君と豪傑君の持論の一部を引用します。
 先ず洋学紳士君
私の願いとして、私たちは武器ひとつ持たず、弾一発たずさえず、静かに言いた
いのです。「私たちは、あなたがたにたいして失礼をしたことはありません。非難
される理由は、さいわいなことに、ないのです。私たちは内輪もめもおこさず、共和
的に政治をおこなってきました。あなたがたにやって来て、私たちの国を騒がしく
していただきたくはありません。さっさとお国にお帰りください」と。彼らがなおも聞こ
うとしないで、小銃や大砲に弾をこめて、私たちをねらうなら、私たちは大きな声で
叫ぶまでのこと、「君たちは、なんという無礼非道な奴か。」そうして、弾に当たって
死ぬだけのこと。

いわゆる非武装無抵抗主義的な意見です。“あなたがた”とは当時アジア各国を
植民地化していたヨーロッパ諸国のことです。

そして豪傑君は

アジアだったか、アフリカだったかちょっと度忘れしましたが、大きな国がひとつ
ある。その名を度忘れしたのですが、とても広く、とても資源がゆたかだが、一面
とても弱い。聞くところによると、その国は兵隊は百万以上あるけれども、乱雑で
無統制で、いざというときの役に立たない、とのこと。聞くところによると、この国
は、制度があってないようなものだ、とのこと。つまり、よく肥えた大きなイケニエ
の牛なのです。これは天が、多くの小国の腹を満たしてやるために、エサとして
与えたところのもの。なぜさっさと出かけていって、半分、あるいは三分の一を
割き取らないのですか。~中略~われわれがすでに大国を領有し、土地は広く
人民は多く、軍隊は強く、軍艦は堅固で、いよいよ農業をすすめ、いよいよ商業
を盛んにし、いよいよ工業を補助し、いよいよ立派な政策を実施する。そうすると
、わが政府は財政がゆたかになるので、それでもって欧米の文明の成果を買い
取り、わが人民の財政がゆたかになるので、それでもって欧米の文明の成果を
買い取るならば、かのイギリス、フランス、ロシア、ドイツなどが、いかに鼻息あら
くとも、もはやどうしてわれわれを侮ることができるでしょうか。
といった意見です。
名前を度忘れした大きな国とは清のことで、兵隊が無統制云々といった部分は
この本の出版の前年におきた長崎事件のことを指しています。

長崎事件
https://ja.wikipedia.org/wiki/長崎事件

これらの意見にたいする南海先生の意見として
わがアジア諸国の兵隊は、それで侵略するには不十分だけれども、それで
防衛するには十二分なのです。だから平生から教育し、演習して、士気を盛
んにしておくならば、どうして防衛できなどという心配がいりましょうか。どうし
て紳士君の説のように、なんの抵抗も試みないで殺されるのを待っている必
要がありましょうか。どうして豪傑君のプランにしたがって、隣国の恨みを買
う必要がありましょうか。
というものがあります。

 実際の日本はこの40年ほど後に豪傑君のプランのように清の東北部に満洲国を
建国し、多くの隣国から恨みを買う結果になったのは学校の歴史の授業で既にご
存知かと思います。

 ただ今の教科書と違うのは、大陸進出の元々の理由は国防のためで、侵略のた
めでは無かったということです。元々満洲へ日本人が多く出ていったのは南下す
るロシアの脅威を防ぐという目的でした。
現在の日本の歴史教育を「自虐史観」として批判する人の多くが強調する論点の
一つにもなっています。

 アメリカとの戦争に限って言えば、アメリカが東進しハワイを併合し、フィリピン人
を騙しその領土を奪い、中国での利権にたいする触手を伸ばしさえしなかったら
起こりえなかったことだと言えるでしょう。
悪いのはどちらかなのかは言うまでもないが、何万年も前から殺し合いに勝った方
が善とされる人間の世界では通用しない意見であるのもまた事実です。

 中国に関していえば、彼らが最初に排除すべき相手を間違ったのが混乱が長引
いた原因の一つであるでしょう。
抗日気運の盛り上がりの陰に欧米諸国の陰あるのに気づかず、植民地化を防ぐ
仲間となりえた日本を最初に排除しようとさえしなければもう少し時間はかかった
かもしれないが、アジア各国は戦争の被害をもう少し抑えて独立が出来たかもし
れません。
そして現在の中国と言えば「愚公山を移す」という今では通用しない言葉をもちだし
てまで愚行に励む毎日です。
愚行だろうが愚公だろうが山は移せる、しかしそれは大抵の場合間違った方向でし
かないことに中国は早く気が付かなければまた同じ過ちを繰り返すだけになるでしょう。

 豪傑君に代表されるいわゆる大陸浪人、志士、壮士と呼ばれる人達の活動の
背景には、

「中国(清)はヨーロッパの進出に対してなんら有効な対応ができておらず、将来的に欧米の植民地になるだろう、そうしたら属国状態の朝鮮もあっという間に植民地化されるだろう。そうなったら次は欧米諸国が日本に一気に圧力をかけてくるだろう。そうなる前にこちらから大陸へ向かい出て欧米諸国の植民地化を防ぐ活動をしよう。」

といった考えが多かったであろうことは、玄洋社、黒龍会、宮崎滔天等の活動を調べればなんとなく分かってきます。

そしてこの活動はこの本の出版から数年~数十年の後に幾つかの成果をもたらしましたが、そういった成果を現在の歴史教育で知ることは中々難しいことのようです。そういった成果を得る前の日本の状況を知るにも良い本です。

 しかしながら結果としては日本は植民地を持ち、アジア各地が戦場になり
多くの犠牲者をだしたのもまた事実です。実際に被害を受けた人に「これを永遠
に憎み、永遠に許さず、この無念を次代に引き継ぐ」という思いにさせたのも
事実です。こういった犠牲者には「アジアの欧米諸国による植民地支配からの
解放」、「アジア諸国の連立」といった大義名分など何の説得力も持ちません。
親、子供、親類、親しい人を殺された、生活の基盤を奪われた、そういう人に
とっては被害を受けたという事実が全てであり、大義名分など何の慰めにもなり
ません。
加害者の無自覚、傲慢さは今なお別の活動で続いたままです。

 教科書では教わらない事実を知ることはとても大事ですが、同時に多くの無名
の犠牲者の気持ちを忘れてはならないことも大切です。

 若干話がずれてきたので本書の内容に戻ります。本書は国防以外にも多くの
分野に関する様々な考察は当時の日本を知るには良い資料になります。

 内容の一部に進化論に対する誤解や、世界の情勢に対する事実誤認が幾つか
あるようですが、その辺については原文に詳しい注、解説がついてます。

以下にこの本の出版前、数年の間に日本やアジアでの幾つかの出来事と著者
についてのリンクを載せておきます。

 

中江兆民
https://ja.wikipedia.org/wiki/中江兆民

1881年にハワイの国王がアメリカの進出を抑えるために皇室とハワイの王室との
婚姻関係、そして日本人の移民の要請をしたこと。

1884年~1885年、ベトナムを巡るフランスと清の戦争

1885年。朝鮮開化派のクーデター。甲申政変。

1885年。朝鮮開化派の支援のためのクーデター未遂事件。

1886年。日本人に人種差別問題への強い関心を引き起こしたノルマントン号事件。
.
.
.
.
 
 

« 昨日の帰宅時ほか | トップページ | 組織的にストーカーをされている確実な証拠 »

近所の様子・仄めかし・嫌がらせ」カテゴリの記事

集団ストーカー」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 昨日の帰宅時ほか | トップページ | 組織的にストーカーをされている確実な証拠 »